ほうこうレポート

ほうようポケモン、こうもりポケモン。

【小話】ポケモンエグザボール

ポケモーーーーーン!!!

エグザボーーーーーーーール!!!!!

さぁ今年もエグザの季節がやって参りました!

張り切って参りましょう!!!



えー改めまして、このラジオ放送では「第23回 ポケモンエグザボールナショナルカップ」の決勝戦を実況中継いたします。

実況はわたくし、テレビライモンのタケミツが務めさせていただきます。

さて今回は、解説の方をお呼びしています。

解説はお馴染みエグザ界のレジェンド、マゴベエさんです!

マゴベエさん、よろしくお願いいたします。

「不肖、マゴベエと申します。どうぞお見知りおきを」

はい、ありがとうございます!

それでは、試合開始まではまだお時間がありますので、一度エグザのルールを振り返っていきましょう!

エグザの放送が初めての方もご安心ください。




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エグザボールを一言で説明しますと、バトルをしながら相手チームのゴールアーチの間にボールを運ぶスポーツです!

コートは縦275m、かけることの、横幅が170m。

サッカーコートが縦105m、横68mですので、おおよそ縦横に3倍程度の広い面積となります!

そしてその両端には半径4mのゴールアーチが置かれております。

ポケモンは1チーム4匹までコートに登板し、2チーム合計8匹がボールを巡って争うスポーツです。

1クォーター10分の試合を計4回行いまして、得点の合計数を競います!!




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また、エグザには2種類のゴール方法があります!


一つは「アタック」。

ポケモン自身がボールを手に持って、ボールを手放さすに自分ごとゴールアーチを潜る方法です。

強力な肉弾戦に期待しましょう。


そしてもう一つが「シュート」。

ポケモンは一切ボールに触ってはならず、技だけでボールをゴールアーチに潜らせる方法です。

技による華麗なボール捌きが楽しみですね。



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そして、エグザのルールで最も重要になるのが、技に関するルールです!

ボールを手に持っているポケモンに対しては、チームのうち1匹だけ、直接攻撃を仕掛けることができます!!

これを「チャレンジ」と呼びまして、エグザボールが最も過激な球技と言われる所以でもあります!

一度自チームのポケモンが相手に「チャレンジ」した場合、相手がボールを一度手放すまでは、そのポケモン以外が「チャレンジ」することはできません。

よって、ボールを持つポケモンと、それを止めるポケモンの、正々堂々1対1勝負が起こるわけです。

なお、キーパーのポケモンだけは例外となり、自チームでチャレンジしたポケモンが離れていれば、再チャレンジが可能です。

ボールを持ってアタックするポケモンは、相手チームの1匹と、相手キーパーという2回の1on1を潜り抜ける必要があります!

なおこのチャレンジは、攻撃技だけでなく、相手に影響を与えるような変化技も対象となります。

味方を補助するような技の活躍も見られるルールです!

また相手のポケモンに直接当てない限りは技の使用は自由となっています。


試合中のチャレンジなどでポケモンが戦闘不能になった場合、チームは別のポケモンに入れ替えることができます。

戦闘不能状態でない戦略的交代は1チームにつき4クォーター合計で2回まで認められています。



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……と、ここまでがポケモンエグザボールの簡単なルールになります!

言ってしまえば、技を駆使したりバトルをして、ボールをゴールアーチに潜らせれば勝ち!

というスポーツです!!

マゴベエさんにお聞きします!

「なんでしょうかな?」

このスポーツの魅力とは一体なんでしょうか?

「ふむ……極めて簡単で、すこぶる難しい質問と言えましょうか」

と言いますと……?

「エグザの真髄は、『ブショー』の精神にあると心得ております」

なるほど! ブショーとはなんでしょうか?

「ブショーとは、数百年の過去に幻の「ランセ地方」にて口承される、ポケモントレーナーの先駆けにございます」

ランセ地方……存在したのかは今も専門家の皆様が議論されていますね。

「えぇ。彼らは互いの領土を奪い合っていました。しかしながらその方法は『イクサ』という、正々堂々としたポケモンの戦いで決着したと言われます」

なるほど!

「エグザボールの語源は一説には、この『イクサ』から来ているとされます」

なるほど、実際にエグザボールもポケモンたちは1対1でぶつかり合いますね。

「左様です。エグザボールには正々堂々としたブショーの潔さが込められている。そんな清い魂のぶつかり合いが、我々を魅了してくれるのでしょう」

ありがとうございました。私も遠いランセに想いを馳せて、胸が熱くなる思いです。

さぁ! そんなところで、コートに選手ポケモンが入場して参りました!!!

エグザボールお馴染みのテーマソングと共に、ポケモンたちがゆったりと歩を進めます。

栄えある決勝の対戦カードは!

新都市ライムが誇る往年王者、ライムグローファンタズマーーーーー!!!

対するは

火山の麓から彗星の如く現れた新星、ハジツゲドリーミーフェローーーーーーーーズ!!!

今回の決勝は非常にアツい!

一昨年もエグザナショナルを優勝したライムグローファンタズマに対して、これまではトーナメントにも現れていなかったハジツゲドリーミーフェローズが挑戦をする形となります!

マゴベエさん、今回の対戦カードはいかがでしょうか?

「ふむ……解説である以上色眼鏡で見てはいけませんが、ハジツゲ側がライム側の堅牢な防御をいかに攻め落とすか。ハジツゲの城攻めと言えましょう」

そうですね〜。ライグロはあの手この手をつくしての防御力でこれまでも試合を勝ち取ってきました。そこをどう崩すかがハジドリ勝利の鍵となりそうです。



…………



  𖡬  𖡬  𖡬  



おっと、バトルポケモンが選出され、スタジアムの点検が始まりました。

さぁ先発で戦う8匹のポケモンはー……



ライムグローファンタズマ!

クレベース!

ジャローダ!

インテレオン!

ヒヒダルマ、ガラルのすがたーーーー!!!



そして、ハジツゲドリーミーフェローズ!

トリデプス!

サーナイト!

ゾロアーク!

カイリキーーーーーー!!!!!



さてマゴベエさん、この先発ポケモンたちはいかがでしょうか?

「精彩を放つは、やはりライム側のこおりタイプ2匹でしょう。勢い留まるところを知らないポケモンたちです」

ライムが誇る最強の矛と盾、アイスブラザーズ!

今宵もフィールドを大寒波が包むのでしょうか!?

しかし、ハジドリもこの最強タッグを打ち倒す術は十分用意してきているでしょう。

特にゾロアークは、今シーズン大会で縦横無尽の活躍を見せていますよね!

「ハジツゲ側の破竹の勢いを作ったのは彼女と言って差し支えないでしょう。スポーツにおいて情報のほとんどは視覚に依存します。周囲十数メートルといえども、その視覚を騙すような能力は値千金です」

巷ではゾロアークの幻影を指して、今回の試合をファンタズマVSファントムと呼ぶ人もいるようです。

まさにゾロアークは注目株! みなさんご期待ください!


他には……。


  𖡬  𖡬  𖡬  

さぁリスナーの皆様お待たせいたしました!

試合開始の準備が整ったようです。

コート中央の発射台にボールがセットされます!

各チームキーパーを除いた3匹ずつのポケモンが中央の円に集います。

試合開始のホイッスルーーー!!

飛び上がったのはライグロ・インテレオン!

驚異的跳躍力でボールに手を——

おっと、トラブルでしょうか?

ボールが打ち上がっていません!

インテレオンの手は空を切り、着地しました。

他のポケモンたちも首を傾げています。

審判とギルガルドがボールに——

いや!!違う!!!

後方をゾロアークが走り去った!!!

ボールを持って颯爽と駆けていきます!!!

一体何が起こったのでしょうか?

「ボールが跳ね上がらない幻影を見せていたのでしょう」

なるほど!

ゾロアークの幻影に我々一同まで騙されてしまいましたね。

「ゾロアークの幻影は効果範囲には今ひとつ欠けてしまう。だからこそ、一同が中央に集まるこのタイミングは好機だったということでしょう」

いきなり仕掛けたゾロアーク!

置いてけぼりを食らったライグロ側、どう止める!!!

他のポケモンも一斉にゾロアークを追いかけます!

おっとインテレオンが飛び上がった!!

背中のひだが空にはためく!

風の勢いでゾロアークとの距離は縮まるが、追いつきはしないか……!

インテレオン、地面に着地!

腕を地に突き立てる!!

これは来るか……?

ゾロアークに立ちはだかる水柱ーーーッ!

しかしゾロアークは華麗にかわしていきます。

そして——

きたッ!

水柱から生えいずるは、大量のツタァ!

ライグロ伝家の宝刀、ちかいコンボだーーーー!!!

辺りは一瞬でノモセ大湿原のように早変わりしてしまいました!!

ゾロアークも草に足を取られてうまく進めない!!

マゴイチさん、今の技の解説をお願いします。

「それぞれ、くさのちかいと、みずのちかいというわざ。それぞれツタや水の柱を突き上げる攻撃で、息を合わせることで合体技へと姿を変えます」

ライグロを筆頭に、少なくないチームの試合で見られますよね!

「えぇ。強力なだけでなく、フィールドに種々の影響を及ぼすことは、一度ご覧になった方ならご存知でしょう。この場合では、フィールドに草やツタが生えてぬかるみ、走ればすぐに足を取られてしまいます」

解説ありがとうございます!

ライグロが幾度となく使ってきた防御の一手。挨拶代わりとばかり、初っ端から見ることができました。

さぁ誓い技で状況は一変。

現在ボールを抱えるはインテレオン。

湿原を眼下に、悠々と滑空しています。

そこに立ちはだかるは、サイコパワーで浮き上がったサーナイト!

構えた腕には明らかにとんでもないエネルギーを携えた紫の球が生み出されていきます。

「じゅうりょくでしょう。この技の及ぶ領域では、はねるすらままなりません」

サーナイト! 大空のポケモンを撃墜した回数は数知れずっ!

たまらずインテレオン、ボールをパスして向きを変える!

間一髪、影響範囲は逃れたようです。

さぁインテレオンの手を離れたボールは、ガラルヒヒダルマに渡りました。

のっしのっしと巨体がフィールドをひた走る!

ダンプカーでもプリズムタワーでも跳ね飛ばしてやると言わんばかり。

圧巻の走りを見せますヒヒダルマ!

おっとヒヒダルマの行方を半透明の壁が遮った!

サーナイトのリフレクターだあああっ!

どうするヒヒダルマ!

しかしヒヒダルマ、走る勢いが緩みません!

別カメラにはニヤリと不敵に笑うヒヒダルマの横顔ッ!

まさか強行突破するのか?

勢いよく右腕を振り上げて——

拳、一撃!!!

全体重に走る勢いまで乗った、破滅の拳!

リフレクターを、腕っぷし一つでかち割ったーーーーっ!

流石はヒヒダルマ、ライムのアイスブラザーズにして最強の矛!!!

さぁ遠くからチャレンジを仕掛けたものの失敗に終わったサーナイト。

必死に空中からヒヒダルマを追っている状況。

走るヒヒダルマ!

飛ぶサーナイト!

さぁサーナイトの周囲に、ヒヒダルマの頭ほどもあろうかという大きな念波の塊が現れた!

その数1、2、3、4、五つ!

ハジツゲサーナイト式りゅうせいぐん!

空に圧倒的存在感を放つ天体が5つ!

当たればひとたまりもない巨大隕石が、まとめてヒヒダルマに降り注ぐーーっ!

しかしヒヒダルマ走りを緩めません!

一瞬チラリと後ろを見て、脇目も降らずゴールに一直線。

大丈夫なのかーーーっ!?

あっと隕石の一つが破壊されたッ!

破片まで次々と粉々にされていきます!

また破壊された!

一体何が——

「地上を」

地上——なるほどインテレオンがその銃口を構えていましたぁ!!

次々と発射される水の銃弾が、正確無比にサーナイトの攻撃を撃ち抜いていきます!

あっという間にサイコショックが全て無効化されてしまいました。

さぁフィールドを駆け抜けたヒヒダルマ。

しかし待ち受けるは最大の壁!

堅牢堅固の化身、トリデプスが最後に立ちはだかる!!

トリデプスが両前足を地面にたたきつけたっ!

次々と岩が地面からせり上がって参りました!

一瞬で城壁が形成されたーーーっ!

幾重にも連なる岩の壁。まともに登り切るのは困難でしょう。

どうするヒヒダルマ!

走るペースが落ちなーーーい!

その不適な笑みをカメラは見逃しませんでした!

ヒヒダルマがオーラを纏い始めました。

これは、ばかぢから!

どうやらヒヒダルマが弾き出した答えは一つ!

壁があるならどうするか?

拳で叩き割って進めばいいッッ!!

唸る剛腕!

岩壁に風穴が開いたァ!

岩の破片がゴールに降り注ぐ中、ヒヒダルマは止まらない!

さぁ一夜城がものの数秒で文字通り崩れ去ってしまいました。

しかしトリデプスの本領発揮もここからです。

ハジドリ・トリデプス、とおせんぼうを展開した!

空のように真っ青な第二の壁がゴールアーチを覆う!

立ち向かうライグロ・ヒヒダルマは腕を振り上げて戦闘体制ッ!

その拳はとおせんぼうを捉えるか、はたまたトリデプス本体を捉えるか——

ぶつかり合いました!

岩の城壁を一瞬で更地にしたその拳が、トリデプスの顔に突き刺さっています!

しかしトリデプスも一歩も譲らない!

硬質化した顔は、唸る拳を持ってしても傷一つつきません!

「鉄壁。その名の通り、自分自身が鉄のごとき硬さを得るわざです。」

とおせんぼうの青い障壁が消え、トリデプスの顔がどんどんきらめきを増して行きます!

殴る! 殴る! 殴る! 殴るっ!

しかし何度拳を打ちつけたとて、トリデプスには響かない!

とおせんぼうの障壁が消えたからといって、攻撃をやめればまたとおせんぼうがすぐに展開されてしまいます!

ボールを投げてはいけないルール上、ヒヒダルマはどうにかしてこの厚い厚い壁を乗り越えなくてはならないっ!

おっとトリデプスが動いた!

唸り声と共に足を地面に打ち付ける!

察したヒヒダルマ、すぐさま連続バックステップで引いていきます。

数刻前にヒヒダルマがいた場所を次々と岩が突き抜けます!

さぁヒヒダルマ、ストーンエッジの圏内から逃れて豪快な着地。

おっとそこにゾロアークが仕掛けたーーーッ!

ヒヒダルマのボールを奪いに近づきます!

ヒヒダルマもただでは渡さない!

必死にボールを抱きかかえ、左右にステップ! ゾロアークを揺さぶります!

しかしゾロアークは取り合う様子がない!

ここでゾロアークの瞳に光が宿る!

地面が割れたーーーーーーーーっ!

フィールドが縦真一文字に真っ二つ!!

ゾロアークの幻影だーーーーーーーーーーーッ!

ヒヒダルマの足が竦んだ!

バランスを崩して、一瞬頭の雪玉が大きく揺らぎます!

そのたった一瞬のスキが命取り。

ゾロアーク華麗な手捌きを披露!

ヒヒダルマにはダメージを与えず、華麗にボールだけを奪っていきましたァ!

騙し、惑わし、欺き、偽り、不意を衝く!

これがゾロアークの真骨頂!!

恐らくゾロアークを目の前で見ているヒヒダルマも、幻影であることは分かっていたことでしょう。

それでも圧倒的なリアリティの幻影を前に、本能が体に待ったをかけてしまう!

さぁ現在ボールを抱えるはハジドリ・ゾロアーク。

幻影によるゾロアーク5体の進軍を、止めにかかるのはインテレオン!

フィールドを覆うほどの大波がうねる体を持ち上げましたっ!

ここは一旦停滞。

ゾロアークは数歩大きくバックステップ、波から距離を取ります。

同時にボールをパス!

ここでボールがカイリキーに渡った!

カイリキー走るっ!

しかしその先は、到底走れるような地形ではない!

さらにジャローダが立ちふさがって……。

おーーーーーーーーーーーっと!!

カイリキー、飛びました!!

ラジオをお聞きの皆様、言い間違いではありません!!!

カイリキーが、飛びました!!!

サーナイトのサイコキネシスが、筋骨隆々の巨体を空高く持ち上げているっ!

瞬く間に湿原もジャローダも乗り越えて、再び地に着きました。

ゴールは目前!

他の敵は追い抜いた!

あとはキーパーとの一騎打ちのみ!

クレベース、まずはつららおとしでカイリキーを牽制します。

カイリキー壊す!壊す!

目の前に次々立ちふさがる氷塊を、自慢の手刀で粉々に砕いていきます。

もう幾ばくも距離はありません!

クレベース、通すわけがなかろうと、とおせんぼう!

姑息な真似は使わないぞと言わんばかり!

カイリキーはクレベースに向かって一直線。

クロスチョップが炸裂したーーーーーッ!

これは大ダメージ!

しかし流石はクレベース、この一撃にも怯まずつららおとしで応戦します。

避けきれはせずとも、まだまだかすり傷。

一旦引いたカイリキー。

ビルドアップで自身を強化していきます。

カメラに筋肉を見せつける!

スタジアムも沸き上がっています!

一方クレベースも黙ってはいません。

じこさいせいでみるみる欠けた体が治っていきます。

不沈のクレベースと呼ばれる所以はここにあり!

クレベースが繰り出すはふぶき!

猛烈な風ですが、カイリキーを止めることは――

インテレオンがなみのりを繰り出したーーーーーっ!

いつの間に戻っていたインテレオン、そしてふぶきとなみのりと言えば——

一瞬にして分厚い氷の壁が出来上がってしまいました!!!

壁の先端を見上げるカイリキーにも、焦りの表情がうかがえます。

なみのりをクレベースが凍らせて出来上がる、気が遠くなるほど分厚い氷の壁!

誰が呼んだか、ファンの間ではグレッシャーパレスと名前までついた、氷の城がカイリキーを阻みます!

これをすぐさま破壊するのは困難か。

再びサーナイトがカイリキーを持ち上げる!

しかしこれはインテレオンが見逃さないでしょう!!

やはり!

ボールがカイリキーの手から離れてあらぬ方向へ飛んで行ってしまいました!

インテレオンのねらいうちだ!

無防備に体を空中に晒してしまえば、インテレオンの銃弾からは逃れられない!

もちろんカイリキーに当たってしまえばクレベースとインテレオンの同時攻撃となってしまい、反則です。

しかしこのポケモンインテレオン、ひとたび狙ったボールを打ち抜けなかったところは見たことがない!!

ライグロの中でも最もファンの多いポケモンなのも、納得です。

さぁ飛び上がったボールは、現在ライグロ・ジャローダの渦に巻き込まれて舞い踊っています。

一進一退の攻防。

第一クォーターも5分が経過し、残り半分となりましたが、お互い一歩も譲らずといった状況です。

「こうも点数の入らない試合も稀なものです。晴れがましい決勝の舞台に名折れしない戦いぶりは、胸踊るものがありましょう」

この拮抗状態を破るのは、果たしてライグロか、ハジドリか!!!

はっぱの竜巻を3つ携えジャローダが走る!

現在フィールド半分の地点まで来ました!

ジャローダ自身がボールを持っていないので直接攻撃ができない今、ハジドリ側どうボールを奪うのか。

ゾロアークが迎え撃って、あくのはどう!

はっぱは勢いを失って散っていきます。

しかしジャローダ、ここは冷静にツタでボールを掴み、ヒヒダルマへパスしました。

受け取ったヒヒダルマ走り出す!

ロケットスタート、ヒヒダルマ!

しかしその先には、ついさっきボールを奪ってきたゾロアークが守っています。

ゾロアークのあくのはどう!

しかしこれを、ヒヒダルマはつららおとしでブロックしました。

立ち止まったヒヒダルマ、そのままつららを出し続けます!

当たったらひとたまりもないつららの数々を避けて脇に飛ぶゾロアーク。

まだ止まらない!

ライムのヒヒダルマ、その特性はダルマモード。

しかしごりむちゅうを疑うほどに、狂った量のつららを出し続けるッ!

目の前百メートルほどに渡って、大陸のごとき氷の塊ができてしまいました。

味方のジャローダでさえも、うかつに近づけません。

ヒヒダルマが吠えたっ!

拳を打ち当て気合十分。

そして――自らが作り出した氷山を登り始めたぁぁぁっ!!

氷に手をかけ飛び上がり、まるでサーカスかのようにするすると登っていきます!

巨体の重さを全く感じさせない軽やかな動き!

果たして頭の雪玉は重くないのでしょうか?

氷河を掴んでは自分の体を引き上げ、あるいは蹴り飛ばし。

ボールを左腕に抱いているにも関わらず、この動き!

これにはゾロアークといえども、そう簡単には近づけない。

あっという間に登頂成功!

かと思えば、登りの勢いをさらに増した猛烈なスピードで下っていきます!!

目指す次の目標はただ一点、トリデプスーーーっ!

てっぺきで構えるトリデプスにも、焦りの表情がうかがえます!

ヒヒダルマがオーラをまとって――

ばかぢからーーーーーーーーーッ!!!

受け止められるかッ!

後方に吹き飛ぶトリデプス!!!

これは流石に耐えきれない!!!

トリデプス、ダウンです!!!!!

そしてヒヒダルマは意気揚々と——

ゴーーーーーーーーーーーーーールッ!!!!!!!

開始7分弱にして、やっと先制点を奪い取ったのは、ライムグローファンタズマだーーーーっ!!

スタジアムの熱気も最高潮!

マゴイチさん、今のゴールはいかがでしたか?

「カイリキーとサーナイトが戦線を上げていた故に不在だった、その隙を突いての怒涛の反転攻勢。お見事でした」

つい先ほどまで攻め込まれていたのに、まさに一瞬でしたね!

「また、残るゾロアークをつららおとしで退けながらの快進撃は、ヒヒダルマの機敏さあってこそ。トリデプスを打ち倒したことを含め、ヒヒダルマのパワーが存分に生かされたゴールでした」

えぇ、ジャローダやインテレオンの補佐を受けて、ヒヒダルマの豪快な突撃。

まさにライムグローファンタズマの王道パターンでした。

さてマゴイチさん、ハジツゲ側はトリデプスという強力なキーパーを失いましたが、ここからの試合展開はどうなるでしょうか?

「ハジツゲには、圧巻の防御を誇るキーパーがもう一匹。キョジオーンがいる以上、ライムが押し切る展開はまだ考えづらいでしょう」

キョジオーンといえば、準々決勝・マリナードサニーレック戦が大変印象的でしたね。

突撃してきたマリルリを悠々と受け止めての、しおづけによるノックアウト。私たちも動揺を隠せませんでした。

しかしながら、ハジドリが一点奪われてしまったことに変わりはありません。

ここからどういった展開を見せてくれるでしょうか!

試合再開の目途が立ったようです。

ボールを持つはハジドリのトリックスター・ゾロアーク。

試合再開のホイッスル!

おっとカイリキーが増えたッ!

ゾロアークを守るように前に立っていたカイリキーが、突如分裂しました!

かげぶんしん……というよりはゾロアークの幻影でしょうか。

3体のカイリキーが、ふふっ。

失礼。自慢の筋肉を見せつけている!

一体っ、何が起こって、いるんだ!

相手に、カメラに、スタジアムの観客に、カイリキーがポージング!

スタジアムが歓声ではなく笑いの声で揺れています!

当のゾロアークは棒立ち、流石にライグロ側の3匹も困惑を隠せません!

一体ゾロアークはこの幻影でなにを企んでいるのかッ!

あっとインテレオンが構えた!

上空に3連続でねらいうちを放ちます!

その先には――サーナイトの姿ーーーーーーっ!

サイコキネシスでサーナイトとともに空を翔けていたボールが、空中に弾き飛ばされました!

「どうやらゾロアークの狙いは、サーナイトから意識を逸らすことだったようですね」

カイリキーの幻影を囮に、サーナイトが戦線を押し上げる!

どこまでも魅せてくれる、ゾロアーク!

そしてそれを察知したインテレオンもお見事と言わざるを得ません!

さてもボールはサーナイトがサイコキネシスで再度捉えた。

再び空中からゴールを見据えます。

サーナイトを先頭に、全員がゴールへとひた走るっ!

流石に速さではインテレオンが抜きんでています。

ここでインテレオンがみずのちかい!

ゴールポスト付近に二本の水柱!

あーっとそれを凍らせたのはクレベース!

巨大な氷柱がフィールドに出現しました!

速さはピカイチ、インテレオン、あっという間にサーナイトを抜き去ります。

さぁ氷柱に登って……?

氷柱の上からねらいうったァ!

ボールが弾き飛ばされて、サイコキネシスは解除!

上から弾けばまたキャッチされるから、横から撃てばいい!

その狙いまで見ての、みずのちかいからのふぶきでした。

ハジドリは完璧な位置取りのインテレオンにクレベースまで乗り越えなければならない!

現在ボールを持つのはジャローダ。

インテレオンが弾いたボールを、ハードプラントで丁寧にキャッチしました。

無数のツタの奔流がボールを相手ゴールへと運んでいきます!

しかしおっと!

なんとここでキョジオーンが戦線を上げていたァ!

ハードプラントに対して、余裕のしおづけ!

草花を枯らす強烈な塩分に、ハードプラントの勢いがたちまち収まっていくーーっ!

それにしてもキョジオーンは動きは俊敏ではないはずですが――

いえ、カイリキーがキョジオーンを持ち上げている!

4本の腕で軽々とキョジオーンを持ち上げて、後ろから抱きかかえるように運んでいました!

さぁカイリキー、キョジオーンを優しく降ろして、ボールを掴み取る!

走るカイリキー!!!

キーパークレベースはゴールを離れない!

インテレオンはじっと氷の上で銃口を構える!

ジャローダはハードプラントの反動で迎え撃つことはできない!

ならばこのカイリキーを止められるのは、ただ一匹だ!

ヒヒダルマがカイリキーを止めにかかるっ!!!

両者鬼神のごとき様相。

避けようなどと微塵も考えていないことが走りからわかります!

そして——ぶつかったあああッ!

お互い一歩も引かぬ構え!

肩と肩のぶつかり合い!

さぁここは一旦距離を取って。

互いの表情は笑顔!

好敵手に出会った喜びを噛みしめる!!

カイリキーは外側の左腕でボールをわしづかみにしたまま、両手をクロス!

クロスチョップを決めにかかる!

ヒヒダルマの体が炎に包まれる!

フレアドライブだああああっ!

意地と意地がぶつかり合う!

スタジアムが一瞬、ぶつかり合った衝撃に揺れました。

クロスチョップを跳ね上げてカイリキー懐に潜り込んだ!

下腕両肘を引いてインファイトの構え!

下からの強打にヒヒダルマは、ばかぢからに任せて腕を振り下ろすッ!

我々の目には到底追うことができない拳の応酬が繰り広げられています!!

力では負けたくない。

2匹の強い意志に、周りのポケモンたちすらも足を止めて静観します!

一体どちらが――

止まったッッ!

一体どうなったのでしょうか——

カイリキーの上右腕が、がっしりとヒヒダルマの左腕を捉えているーーーーッッ!

3本の腕でヒヒダルマの左腕を掴み、ヒヒダルマを振り回す!

ヒヒダルマの巨体が宙に浮いて――

決まったああああああああああああ!!!

カイリキー必殺の、じごくぐるまだああああああっっ!!!

地面に叩きつけられたヒヒダルマ!

戦闘不能なのは誰が見ても明らかです!!

ヒヒダルマとカイリキーの目が合った!

カイリキー、笑顔のサムズアップ!

モンスターボールに戻されるヒヒダルマ!

カイリキーは颯爽とゴールに駆けていきます!!

再びほかのポケモンの時が動き出す!

ヒヒダルマに代わってフィールドに登場したネギガナイトもカイリキーを追いかけます!

カイリキー、ゴールまであと100mほど!!

ここまできたら氷柱の上のスナイパーが黙っちゃいないッ!

緩やかな動きで指を構えて――

頭上には目もくれないカイリキー、避けられるか!

発射された銃弾は――防がれたっ!

サーナイトのリフレクターだ!!!

二発、三発、四発!!

しかし一発としてカイリキーを止めるには至りません。

カイリキーの頭上を並走するサーナイト、インテレオンの狙撃を全て防いでみせた!!!!

クレベース、吹雪を放った!

しかし吹雪はカイリキーの頭上を通り抜けて明後日の方向へ。

雪の吹き荒れるフィールドへ、インテレオンが再びカイリキーを狙っています。

吹雪で視界が悪い中、果たして当てられるでしょうか?

カイリキーがひた走――カイリキーが倒れたあああああああああっっ!!

ガラスの割れるような音、ねらいうちのリフレクターは張られていたでしょう!

にもかかわらず、地に膝をつけるカイリキー!

戦闘不能でこそないものの、大きなダメージだ!!

マゴイチさんこれは……?

「恐らくですが、ふぶきを利用してねらいうちを強化したのでしょう」

ねらいうちを、ですか?

「ふぶきの中をねらいうちが通って、打ち出された水が凍ることで、リフレクターを打ち破るまでになったのでしょう」

なるほどっ!

またしてもクレベースとインテレオンのタッグがカイリキーの脚を止めました!!

しかしカイリキーの闘志はまだ消えていません。

腕を地面に突き立て、立ち上がる!

ボールはまだ手放していない!

再び走るカイリキー。

クレベースまたしてもふぶきッ!

強烈な横殴りの雪にもカイリキーは怯みません!

カイリキーが両腕を構えました!

クロスチョップが炸裂ッッ!

クレベース、手痛いダメージ。

カイリキー一旦引きました。

しかしもう時間がない!

決死のインファイトをクレベースに仕掛けた!

しかしクレベースじこさいせい!

拳をぶつけてもそのダメージはすぐに元通り!

残り5秒!

ここでカイリキー、ボールを真上に投げたっ!

頭上後方のサーナイトが手を構えて、サイコキネシス!

最後の抵抗にボールが宙を舞います!

が、見逃すクレベースではありません!

一瞬でとおせんぼうの青い壁が展開されて、ボールは阻まれてしまいます。

ボールがころころと地面を転がりました。

ここで笛の音!

第一クォーターゲームセットーーーーーーーッ!!!



決勝の舞台に相応しい激戦っぷりにスタジアムのどよめきが止まりません!

第一クォーターは強豪ライムグローファンタズマが1点を取ってリードした状態で幕引きとなりました。

結果だけ見ればハジツゲドリーミーフェローズは苦しい展開ですが、決して一方的な試合ではありませんでした。

ではここで一度、第一クォーターの試合を振り返ってみましょうか。

第二クォーターは20分後を目途に開始予定。

リスナーの皆さんはぜひチャンネルをそのままで!


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  𖡬  𖡬  𖡬