1章序論
本稿では、本流ポケットモンスターSVの分野において近年提唱された、風林火山概念をポケモンGO的に解釈することで、ポケモンGO対戦におけるサイクル戦の在り方の見直し、及び構築論の確立を目指している。
1章ではその前提として、本流SVとポケモンGOの相違点を述べ、ポケモンGOのゲーム性の基本的な部分について述べている。初学者の方や復習を兼ねた方にお読みいただきたい。風林火山概念に関しては、次章から述べることとなる。
目次
本流とGOのゲームルール的相違点
まず前提として、本流SVのゲームルールとポケモンGOのゲームルールは大いに異なっている。
SVのゲームルールについては少なくない人が理解はしているであろうことから、ここではSVと比較した際のポケモンGOというゲームの特徴を確認する。
なお、紙面の都合ここでは平易な解説に留める。ゲームルールに関する詳しい解説については、過去の拙著をご覧いただきたい。
技1(ノーマルアタック)
ポケモンGOの対戦が開始したとき、相対したポケモンの次に目にするものはノーマルアタック(以下技1/1技)である。
画面を連続でタップすることによって、次々に技を発動していき、また後述のスペシャルゲージが溜まっていく。
技1の性能を表すものは主に3つある。
1つ目は威力。技1自体にも少量のダメージが存在しており、このダメージ如何では技1による蓄積ダメージを軸に戦うポケモンも存在する。
2つ目はチャージ。後述のスペシャルアタックを発動するにはゲージをチャージする必要があり、そのチャージ量は技1の1発ごとに決まっている。
3つ目はターン数。詳しくは拙著を確認していただきたいが、ポケモンGOは連打のアクションゲームではなく、ターン管理が厳密に行われている。
技1は一発の発動に決められたターン数を消費するのである。
あるいはフレームレートが0.5秒/フレームの格ゲーというのが一番わかりやすいか。
威力は高いほど好ましく、チャージは多いほど好ましく、ターン数は少ないほど小回りが利くため好ましい。
技2(スペシャルアタック)
技1によってメーターが溜まってくと発動できる、いわゆる必殺技がスペシャルアタック(以下技2/2技)。技1で溜めたゲージをいくらか消費することで、一方的に威力の高い技を放つことができる。
威力と、消費するゲージ量、追加効果の3つで性能が定義されるが、これはわかりやすいため説明は不要であろう。
なお2技には「シールド」の概念が存在する。
1試合に2回まで、どんな技2でもダメージを1に抑えることができる。追加効果は発動する。
シールドを使われれば技2使用に使ったゲージは無駄になるため、駆け引きが生まれる。
ポケモンの能力値
本流SVからポケモンGOに入る上である種難解にしている要素が、ポケモンの能力値である。
本流SVではレベルを50と定めているが、ポケモンGOでは「CP」を用いてCP1500以下、のように制限している。
CPは簡単に言えば能力値の合計的存在。
それに上限が設けられているということは、例えばピカチュウならLv70、ウーラオスならLv40の状態で戦う、というイメージ。
そして、このCPは単純な能力値の合計ではないのである。こうげきの高さは、CPの変動に大きな影響を与えるようにシステムが組まれている。
こうげきは小さな上昇幅でも、他の能力値よりCPを多く変動させる。
つまり攻撃が高いと、HPや防御が高い時よりも早く頭打ちに達してしまう。
本流で言うと、努力値上限510に対してこうげきは努力値16で能力値が1上がる。HPや防御は努力値8で能力値が1上がる、と言われているようなもの。
なので基本的にポケモンの能力値は耐久よりであればあるほど全体ステータスが高い。
とはいえもちろん、能力値が低くとも技が優秀であれば活躍の機会はある。
技によるポケモン分類
これらのことから、ポケモンは使う技と耐久値によってある程度特性を決定することができる。
1つ目は、耐久が高く、技2を主体にダメージを出すポケモン。硬い2技アタッカー。
持ち前の耐久で相手の攻撃を耐え、こちらのスペシャルアタックで相手を倒す。ポケモンGOのイメージとして一番わかりやすいポケモン。
万能に戦える一方で、相手がシールドを持っていると思うようにダメージが出せない。
レジスチルやワタッコ、ホルードなどが該当。
2つ目は耐久が高く、技1を主体にダメージを出すポケモン。硬い1技アタッカー
技1シールドがあってもなくてもダメージが入るため、有無を言わさずHPを削ることができる。シールドの駆け引きを無視してダメージレースを推し進めることができるため、特に有利対面での有利度が圧倒的に高い。
ドヒドイデやメレシーなどが該当。
3つ目は耐久が高くない分火力が高いポケモン。柔らかいポケモン。
耐久がなければその分火力があるため、1技でシールドを無視して強引に相手を突破したり、2技のダメージをちらつかせてシールドの使用を強要したりできる。
プクリンやモルペコ、コノヨザルなどが該当。
そして、これらのポケモンには相性が存在する。
例えば柔らかいポケモンは、硬い1技アタッカーに弱い。柔らかいポケモンの弱点をシールドによる無効化で補っているため、シールド有無に関わらずダメージを出す硬い1技アタッカーには太刀打ちしづらい。
また、硬い1技アタッカーは硬い2技アタッカーに弱い。
1技の火力はたかが知れているため、硬いポケモン同士であれば2技の回転やダメージが勝負を決する。
さらに、硬い2技アタッカーは柔らかいポケモンに弱い。
シールドを持たれていると柔らかいはずのポケモンにもダメージが出せないため、削り倒されてしまう。
このように、ポケモンGOにおいてはタイプ相性の他に技と耐久によるタイプ相性も存在する。
交代
特にサイクル戦を考えるうえで本流SVと大きく異なる点が、交代の制限である。
SVでは連続した交換も可能だが、ポケモンGOにおいては1度交換すると50秒間交代ができない。
よってサイクルを回すためには、技2のスワイプミニゲームを使って時間を稼ぐことになるのだが、それでも50秒というとおおよそ3,4発分の時間。
こちらが4発連続で技2を打てることはまずないため、次の交代までに少なくとも1回か2回は相手の技を受けなければサイクルが回せない。そして、等倍の技を1回か2回受けると大体のポケモンは赤ゲージになる。
そのため、基本的にポケモンGOは対面的な戦い方をすることになる。
対面構築
上記のような環境から、対面構築というのは非常に作りやすい。
例えばポケモンGOには「XAB」という概念がある。
これは、初手にシールドを使えば広い範囲に対面を取れるXを置き、裏に相性補完のいいAとBを置くことで対面有利を継続して勝とうという構築。
SVの畑には対面構築はサイクル構築に弱いというセオリーがあるが、ポケモンGOにおいてはサイクルがほぼ回らないためかなり扱いやすい構築タイプの一つ。
展開構築
対面構築しか作れないゲーム性に見えて、展開構築、積み系の構築は同様の概念がポケモンGOにも存在する。
GOの展開構築には2種類あり、起点系とギミック系。
起点系の構築はモルペコのような技2が強力なポケモンをラスイチエースとして置く構築。
他のポケモンでシールドを奪いながら相手のHPを1割~2割ほど残して削り、その残りHPを技1だけで突破することで、全抜きエースがゲージを多くチャージした状態で爆誕。シールドの少ない相手に強力な技2を乱射して勝とうという構築。
もう一つはGO界隈では「ABB」と呼ばれるもので、SVでは役割集中が概念として近い。一匹目のBを出して、Bに不利なポケモンを釣りだし、それをAで処理する。すると残りのポケモンにはもう一匹のBが一貫しているから勝てる、というもの。
展開構築かと言われるとちょっと違う気もするが、一匹目で盤面を整えるという意味ではたぶんそう。
サイクル戦
ではそんなGOのゲームルールの中で、サイクル戦を行うことはできるのか。
結論から言うと、明らかにパーティ負けして最初から勝ち目のない相手以外には可能。
GOのサイクル戦にはいくつかの種類が存在する。
例えば交代受けサイクル。
ポケモンGOでは技2を発動できるタイミングがある程度決まっているため、読み合い次第では相手が技2を発動するピッタリのタイミングで交代をし、相手の攻撃をほぼ不発にすることができる。
この交代受けを繰り返して相手のリソースを消耗していく戦い方で、これは構築タイプに依らず不利構築を覆すためのテクニックといった方が近い。
例えば時間差サイクル。
ポケモンGOは相手の交代を見てから即座に交代することが可能であるため、基本的に不利対面は永遠に不利対面になる。
しかし、交代に時間差を作ることで一時的に有利対面を作り返すことが可能。
例えば、草タイプ、水タイプ、毒タイプ、地面タイプのポケモンがいたとする。
初手で毒と草が対面したとしよう。
草側は不利なので、毒に有利な地面に交代する。
すると毒側は地面に有利な水に交代したいわけだが、地面技自体は等倍で受けてしまうため、少し迷って1発技2を打ってから交代した。
その間、20秒。
その後30秒間は水VS地面の対面が続く。
30秒経過すると、地面側は交代権が復活するため、再び草タイプを戻す。
この時。
地面だった側は交代時間が溜まったが、水側はまだ交代時間が溜まっていない。
つまり、最初に交代を渋った20秒間分だけ、水VS草という対面が出来上がる。
元々不利対面だった側が、この20秒間だけは有利対面をもぎ取れる。
この20秒間で水タイプを倒し切ってしまえば、地面タイプが残りに一貫しているかもしれない。対面の有利不利が逆転するのである。
他にも、2技を溜めて引いた後、次の交代と同時に2技を打つ奇襲サイクルや、相手を少し削ってから出すことでギリギリ対面を取れるポケモンを投げる思考、あるいは早々に一匹目を切ることで死に出しによる交代時間差を作るなどと細々とした内容はあるが、
どのサイクル戦に共通するのは
「自分のリソース消費を防いで、相手のリソースを消耗する」
ことである。
そして、それを行うには適性のあるポケモンを使う必要がある。
例えば、明確な不利対面がかなり少ない、誤魔化し性能の高いポケモン。不利対面でも相手のシールドやHPを消耗しやすいポケモン。あるいは、技回転が速く、交代タイマーを稼ぎやすいポケモン。もちろん耐久もあれば回しやすい。
そのうえで、かなりサイクルを回すことに意識を割く必要がある。
・まずこちらの初手引き先に対して、相手が追いに困るかどうか。
・困っていて交代時間差が作れたなら、交代タイミングを意識して2技で時間を稼ぎ、一瞬の有利対面を作る。
・困っていないならなんとかシールドで時間を稼いだり、あるいは早々対面を切って死に出しによる時間差を作るなど。
SVには明るくないため詳しいことはわからないが、少なくともGOにおいては漫然とプレイしているとサイクル戦ができないのである。
相手と違って交代がターン制ではないし、とんぼや捨て台詞のような交代技もない中でのサイクル戦は細い穴に糸を通すような戦いとなる。
まずサイクル戦ができるパーティを作る。それでもって、サイクル戦を相手に申し込む。その上で相手が付き合わざるを得なくなって、初めてサイクル戦が始まる、ということを念頭に置いておいてほしい。
次章へ続く
次章では、これらの基礎となる概念を元に、風林火山概念のポケモンGOへの導入を行っていく。
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